Sun Mar 02
執筆者:momo
これはあるお寺の廊下に貼りだしてあった室蘭高校の女生徒のことばです。わたしも若い頃これと同じ問いかけを聞いたことがありました。わたしが遠路、先生のお宅にうかがう度に「お前はここに何しにきたんや?」と先生から聞かれるのです。そして「ここ、ここ」と指で畳なり机を静かにトントンと指で突かれるのです。まるで謎かけです。しかしある日思い切って「ここ」とはどこですか?と先生にたずねました。すると先生は「ここか?・・」と何ともいえない顔をされて
「こことはなあ、沙婆のこっちゃ」と言われました。娑婆とはこの世のことですね。要するに先生は「お前はこの世に何しに生まれたのか?」とわたしにたずねておられたのでした。それからまた一年ほどが過ぎたころ、先生が何かの拍子に「人はこの世に仏さまに遇いに来たのですよ」とぽつりと誰かにいわれているのを耳にしました。その言葉が響きました。先生が亡くなったのはもうずいぶん昔になりますが、「ここ、ここ」と言って机をトントンと叩かれた音が今も耳の底に残っています。